筆者が初めてAndroidナビの存在を知り、購入したのがATOTOの製品。2022年に購入して以来マイカーでほぼ毎日愛用している。
前回2024年版のATOTOのナビ解説記事を出したけど、それ以来販売ラインナップの変更など情報が古くなっているところがあったから、2025年6月版として改めて解説する。
ATOTOのディスプレイオーディオの種類

まず前提知識として、ATOTOの商品分類は非常に複雑。
製品の傾向ごとシリーズで大別され、そこから搭載する機能や画面サイズなどの違いでさらに細分化されている。メーカー側の正式な分類がないから、このブログでは便宜上以下のように使い分けている。iPhoneを参考に、こんな感じで分かれているということを把握してほしい。
分類 | iPhone | ATOTO |
---|---|---|
メーカー | Apple | Aotule Electronics |
シリーズ | iPhone15,iPhoneSE... | ATOTO S8,ATOTO A6... |
グレード | iPhone15 Pro,iPhone15 Plus... | S8 Pro,S8 Ultra... |
モデル | 128GB,256GB... | 7インチ画面、9インチ画面... |
展開するシリーズは4つ(5つ)
グレードやモデルの細かい違いを追っていくとキリがないので、傾向がつかめるシリーズに絞って解説する。
2025年6月時点で展開されているシリーズは以下の通り。廉価版のF7は後継機のA5が出ていて、在庫がなくなり次第販売終了の状態なのでシリーズ展開は実質4つ。
シリーズ | 立ち位置 | 価格帯 | 補足 |
---|---|---|---|
F7 | 廉価版 | - | ・LinuxOS搭載 ・終売(A5が後継) |
A5 | 廉価版 | 2万~3万 | ・AndroidOS搭載 |
A6 | スタンダード | 3万~5万 | ・A5との差が小さい |
S8 | 上級 | 4万~6万 | |
X10 | 最上級 | 8万~9万 | 筆者が使用中 |
F7が終売、後継でA5シリーズが登場

唯一LinuxOSを搭載していた廉価シリーズのF7が終売になり、後継としてAndroidを搭載したA5シリーズが登場した。

Amazonの商品説明では進化モデルと書かれている。
A5はA6とほぼ同じ

A5のスペックを見てみると、基本的なところはA6と共通しつつ異なるところが多い。画像は左がA5、右がA6。
SoCは最低限の性能で、メモリは2GB固定。A6の最小構成とほぼ同じと言っていい。
OSは同じAndroidだけど、A6はAndroid10ベースのATOTO独自OSが採用されているのに対して、A5はAndroid9べースのものが採用されている。

説明書を見る限り全体的なUIが違うようで、A5のほうがより簡素なものになっている。
AndroidになったとはいえOSバージョンが古く、処理性能も最低限。A5は本体へのアプリインストールによる単体運用はせず、スマホ連携で使い、A5はF7と同じく純粋なディスプレイオーディオとして使うのが向いていると思う。
だから選び方はこれまでと変わらず、とにかく安くディスプレイオーディオを手に入れたいならA5が良い選択肢だと思う。Androidで色々できる、なんてことは考えないほうが無難。
X10は1DINモデルが追加

最上位モデルのX10は去年の発売開始から目立った動きはない。1DINモデルが追加されたり、その他細かなバリエーションが追加された程度。
筆者は去年から10インチモデルを使っていて、使い心地は最高。S8 Proのような不具合もなく動作も不満なし。

Androidのバージョンも13だから当分はこれで戦っていけそう。もうAndroidナビなしのカーライフには戻れない。
A6、S8はマイナーチェンジで販売継続

スタンダードシリーズのA6、上級シリーズのS8は細かいアップデートを繰り返して販売を継続している。
基本的な性能は2022年から変わらず

A6はSoCやRAMはそのまま。ソフトウェアアップデートで、車両位置追跡やAI機能など、X10と同じ機能が使えるようになった。

S8はGen3という形でマイナーチェンジが入り、RAMの増量、新型タッチパネルの導入、本体の小型化など諸々アップデートがされている。ただしSoCはA6と同様据え置き。
改修に改修を重ねて機能や外観は新しくなってはいるものの、ユーザー体験に最も影響があるであろう頭脳の部分は数年前から変わっていないという状態。
A5の登場で立ち位置が厳しくなった
A6の価格帯は30,000円台、S8は50,000~60,000円台。基本性能が数年前から変わらないにも関わらず価格はそのまま。スマホよりは緩やかながらも徐々に処理性能が上がりつつあるAndroidナビ市場において、A6とS8のコスパは相対的に悪化していると言わざるを得ない。
追い打ちをかけるのが先述のA5の登場。A6とS8から若干性能は落ちるものの、ディスプレイオーディオとして使うのに十分な端末が20,000円台で入手できてしまう。
それに性能を求めるならX10シリーズがある。この2機種を選ぶ理由がいよいよ無くなってきたと感じる。
今買うならA5かX10

そういうわけで、純粋なディスプレイオーディオかスマホ連携だけ使いたいのなら2万円台で入手できるA5、Androidのアプリを使って色々遊んでみたいという人にはX10というのが筆者の結論。
X10はレビュー記事で書いた通り、ハードウェア・ソフトウェアの両方で従来機から一皮むけた完成度になっている。ぜひ国産の高いディスプレイオーディオを買う前に一度検討してほしい。
今のATOTOはミドル帯を選ぶ理由がない
繰り返しにはなるけど、これまでミドルとハイエンドを担ってきたA6とS8はマイナーチェンジによる商品力の維持もいよいよ限界という印象。
S8 Proを使っていた筆者から言わせてもらうと、外観や操作系を色々変えていくよりも、処理性能やソフトウェアの完成度アップといった、もっと根本的なところにコストを掛けてユーザー体験の向上を図ってほしい。

A5は機能に対する価格の安さ、X10は車載端末としては最強クラスのユーザー体験が魅力。一方でA6とS8は価格・性能両方で中途半端な状態になってしまっている。2025年現在、A6とS8の購入は推奨できない。A6を考えているならA5で十分だし、S8なら下位グレードを買うならA5、上位グレードを買うならもう少しお金を積んでX10を買ったほうがいい。
とにかくATOTOにはミドル帯の新シリーズのリリースを期待したい。2025年現在もATOTO以外でまともに国内展開しているブランドがない以上、ATOTOに期待するしかない。今後もし目立った動きがあればまた記事にする予定。



