iPad Air M2の11インチ、Wi-Fiの256GBモデルを購入した。前作のiPad Air 5を踏襲しつつ命名規則を変えたり端末のバリエーションが増えたりと地味な変更点が多い。
基本的にはiPad Air 5から変わっていない。iPad Air M2は現状購入する意味は薄いと感じつつレビューする。
【結論】iPad Air 5からの買い替えは不要
結論、iPad Air M2はiPad Air 5から何も変わっていない。現在iPad Air 5を使っている人は買い替える必要はなく、さらに言うならiPad Air 4ユーザーもそのまま使い続けても問題ない。
iPad Air M2は13インチの大きいiPadが欲しい人が検討すべきで、11インチモデルを買う場合は購入の決め手になる理由が特にないのでスルーを推奨する。
iPad Air M2の特徴
iPad Air M2の特徴は下記の通り。
- 画面は11インチと13インチの2種類
- 内部ストレージは4種類(128GB,256GB,512GB,1TB)
- Apple M2チップによる高い処理能力
- Apple Pencil Pro対応
- 指紋認証のセキュリティ
iPadの中では中間グレードにあたるiPad Air だけど、性能は相変わらずのハイエンドクラス。
iPad Air M2はこれまでiPad Proにだけ用意されていた13インチ(12.9インチ)モデルと4種類のストレージバリエーションが追加された。
従来のiPad Proユーザーの受け皿を想定?
同時にモデルチェンジしたiPad Pro M4はさらに高性能・高価格化が進んで簡単に手が出せるものでは無くなってしまった。
これは完全に筆者の推測だけど、iPad Pro M4は完全に業務用としてのスペックと価格に振り切った一方、一般用途ではiPad Air M2が従来のiPad Proが抱えていたユーザーの受け皿となるために画面サイズとストレージの種類を増やしたのかもしれない。
iPad Air M2の詳細スペック
詳細なスペックは前モデルのiPad Air 5と比較する。
iPad Air M2(11インチ) | iPad Air 5 | |
---|---|---|
ディスプレイ | 2,360*1,640(60Hz) | 2,360*1,640(60Hz) |
SoC | M2 | M1 |
メモリ | 8GB | 8GB |
ストレージ | 128GB,256GB,512GB,1TB | 64GB,256GB |
バッテリー | ビデオ再生最大10時間 | ビデオ再生最大10時間 |
セキュリティ | 指紋 | 指紋 |
Wi-Fi | 6E | 6 |
Apple Pencil | Pro、USB-C | 第2世代、USB-C |
サイズ | 247.6*178.5*6.1 | 247.6*178.5*6.1 |
重量 | 462g(Wi-Fi) | 462g(Wi-Fi) |
SIM(セルラーモデル) | eSIM | nano-SIM,eSIM |
カタログスペック上の主な変更点は処理能力の向上、対応するApple Pencilの変更程度。細かい点としてフロントカメラの位置が変更されて、横向き仕様に最適化されている。
iPad Air M2の処理性能はAntutu約197万点
iPad Air M2のAntutu v10.0.3のスコアは1,969,242点。発売直後に計測したせいかAntutu上では不明なデバイスとして判定されている。
同時に測定したiPad Air 5は1,716,948点。SoCはM1チップからM2チップ、GPUは8コアから10コアに強化されている分順当に性能が上がっている。
ただしこの性能を使いきれる場面はそう訪れない。体感の動作は全く変わらず快適だし、原神とか重量級のゲームをプレイするときにわずかに動作の快適さに違いが発生するかのレベル。
iPad Air M2は約25W充電
iPad Air M2の充電速度は実測値で約25W。接続直後は約20Wから30Wを推移して、25Wで安定して給電する挙動になっている。
iPad Air M2(11インチ)のバッテリー持ちは約12.5時間
YouTubeの動画再生による消耗から計測。
- 動画:1080p 60fps
- 音量:音量0から音量+ボタンを3回クリックした音量
- 画面明るさ:50%
- 1時間再生したときのバッテリー消費:8%
1時間の消費量からの単純計算で、約12.5時間のバッテリー持ちになった。公称のバッテリー持ちはビデオ再生最大10時間なのであまり正確ではないかもしれない。あくまでも参考値として捉えてほしい。
iPad Air M2(11インチ)の重量
iPad Air M2の11インチWi-Fiモデルの重量実測値は465g。カタログスペック上はWi-Fiモデル、Wi-Fi+セルラーモデルともに462g。
タブレットとしては一般的な重さ。
iPad Air M2の質感高い外観
iPad Air M2はApple製品の例に漏れず質感はとても高い。パープルは光の当たり方によってシルバーに近く見える色味で上品。
ケースはiPad Air 5と互換性あり
インターフェースは基本的にiPad Air 5と同じ。変更点は後述。
裏面は単眼12MP広角カメラとSmart Connectorを搭載。
左側面にはTouch ID搭載のスリープボタンとスピーカー、
右側面にはUSB-Cポートとスピーカー、
天面には音量ボタンとApple Pencil吸着用の磁気コネクタを備える。
ボタンやカメラの配置やサイズはそのままだからiPad Air 5用のケースが流用できる。
インカメラは縦向きから横向きへ変更
iPad Air 5からのインターフェース変更点は2か所。
まずインカメラが縦向きから横向きに変更されて、iPadを横置きしたときのビデオ通話の目線や画角がより自然に映りやすい配置になった。
カメラ位置の変更で保護フィルムの切り欠き位置も変わるから、iPad Air 5までの保護フィルムは互換性が無くなった。
Apple Pencil用マグネットの位置が異なる
もう一つの変更は目視では確認できないけど、iPad Air M2はApple Pencil吸着用の内蔵マグネットの位置が変更されている。
Apple Pencil第2世代はiPad Air M2非対応なので吸着せず、充電もされなかった。恐らくApple Pencil Proへの対応とインカメラ位置の変更が原因。
一つ疑問なのがApple Pencil(USB-C)の存在で、カタログスペック上ではiPad Air 5とiPad Air M2の両方に対応しつつマグネット吸着にも対応している。マグネットの仕様がどうなっているのかは不明。
Apple Pencil第2世代は非対応
iPad Air M2はApple Pencil(USB-C)、iPad Air M2と同時に登場したApple Pencil Proの2種類のみ対応。
iPad Air 5まで対応していたApple Pencil第2世代は使えなくなった。吸着・充電しないことに加えてそもそもBluetoothのペアリング対象としても認識されないので、ハードウェアとソフトウェアの両方で完全に互換を切られた形になる。
iPad Air M2でApple純正のペンを買う場合、大半のユーザーには過剰性能のApple Pencil Pro(21,800円)かワイヤレス充電不可・サードパーティ品の存在で割高感の目立つ廉価モデルのApple Pencil(USB-C)(13,800円)の2択になる。選択肢が極端。
Apple Pencil第2世代は2018年に登場して以来iPadの上位モデルに対応してきたスタイラスペンで、長く使い続けているユーザーも多いはず。全く使えないのはただただ残念。
Apple Pencil第2世代の互換品も吸着・ワイヤレス充電できない
サードパーティ製のApple Pencil第2世代と互換性のあるスタイラスペンも、マグネットの位置の都合上iPad Air M2には吸着しない。
今回iPad Air M2と同時に購入したGOOJODOQのスタイラスペンは磁気吸着とワイヤレス充電に対応しているけど、Apple Pencil第2世代と同じく吸着も充電もされなかった。ただしBluetoothのデバイス認識と接続はできたので、ペンの機能を使うことはできた。
この記事を書いているのはiPad Air M2発売から数日経過した時点だけど、筆者が確認した限りiPad Air M2に吸着・ワイヤレス充電に対応するサードパーティ製のスタイラスペンは販売されていない。現状は対応品の発売待ちになる。
Touch IDは継続
iPad Air 5からTouch IDは継続。iPad AirのTouch IDは認証精度が高く、ボタンも大きくて使いやすい。
スリープ状態からTouch IDボタンを1回クリック、そのまま指を押し付けておけばロック解除から操作可能状態まで自動移行する設定にもできるから煩わしさもない。
画面リフレッシュレート60Hzも継続
画面のリフレッシュレートもiPad Air 5と同様に最大60Hz。
最近は低価格帯のAndroidタブレットでも60Hz以上に対応した機種が増えている現状、iPad Air M2の価格帯で対応していないのは明確な弱点。
ただし筆者はスマホとタブレットは60Hzで十分、むしろ60Hzに制限してバッテリー持ちを優先させたい派なので特に不満はない。仕事でiPad Proを使うから120Hzの環境も体験していて違いは分かるんだけど、Apple製品はOSの動作やアニメーションが洗練されていてリフレッシュレート60Hzでも十分滑らか。
引っかかりや残像が気になるというレビューも見かけるけど、同時に比べた時にやっと分かる程度の違いでほとんど慣れの問題。イラストレーターなど僅かな操作感の違いが大きく影響するユーザー以外は気にしなくていいと思う。
完成度は高いが何も変わってない
iPad Air M2はハード・ソフト共に非常に高い完成度でほぼ不満がない良い端末。だけどこの完成度はiPad Air 5の時点で既に到達済み。
動画編集とかヘビーな作業をしない限りはiPad Air 5以降の進化はわずかなもので、使用感は全く変わらない。その一方でApple Pencilの仕様変更など、従来のアクセサリ互換が切れているから買い替えに伴って別途環境の再構築も必要。
だから結論としては最初に書いた通り、iPad Air M2は購入の決め手がほとんど存在しないのが現状で、iPad Air 5を持っているなら買い替えの必要はない。
iPad Air M2の存在意義は13インチモデル
スペックも使用感も変わり映えしないなかで、iPad Air M2の唯一と言える魅力は13インチモデルの存在。
これまで約13インチ(12.9インチ)のiPadが欲しい場合はProモデルを選ばざるを得なかったなかで、iPad Proのスペックは要らないけど13インチの大画面iPadが使いたいという人にはiPad Air M2の13インチはちょうどいい端末かもしれない。
iPad Pro M4の13インチは218,800円スタートに対してiPad Air M2の13インチは128,800円からで、約9万円の価格差。
iPad Pro M4からスペックを削りながらもスペックは一級品の性能、大抵のことは問題なくこなせる13インチの大画面タブレットと考えると検討の余地はある。
認定整備済製品のiPad Pro第5世代もあり
リフレッシュレート120Hzや顔認証を捨てたくないなら、iPad Pro第5世代の認定整備済製品を選ぶ手もある。
2024年5月18日時点では12.9インチのWi-Fiモデル128GBが124,800円とiPad Air M2とほぼ同じ価格で販売されている。在庫次第ではこっちを選ぶのもあり。