先日ESRの冷却ファン付き車載充電器をレビューした後、ESRから15W対応版が発売された。
先行レビューを見ると充電速度以外にも改良点があるらしく、実際に買ってみてレビューする。
7.5Wモデルのアップグレード版
日本語の正式な商品名は「15W 車載充電器 Magsafe + CryoBoost付き」、英語版は「15W Car Charger with MagSafe + CryoBoost」。長いし略し方に困る商品名。
この記事では以下「15W版」、従来型の7.5W充電器は「7.5W版」と呼ぶ。
基本的には7.5W版から全体的に性能が上がったアップグレード版になる。主な特徴は以下の通り。
- 最大充電出力が2倍
- 冷却ファンの静音化
- 質感の向上
基本的な仕様は7.5W版と同じなので、当時のレビューも参考にしてほしい。
結論:7.5W版で十分
先に結論を言うと普通に使うぶんには7.5W版で十分。
7.5Wを既に持っている人は敢えて15Wに乗り換える必要性は薄いと思う。
元々7.5W版の時点で完成度はかなり高かったところに不満点を改善して更に完成度に磨きをかけたような感じで、劇的な変化があったわけではない。
15Wにアップグレードしたぶん価格も上がったから、選ぶなら基本的には7.5Wが良いと思う。
特徴
質感高いボディ
従来の7.5W版と比較するとボディの質感がかなり良くなった。
素材自体は同じプラスチックだけど、色味や形状が洗練されてApple純正品のような印象がある。
7.5W版の外観も黒一色と中央のピアノブラック仕上げで質感は十分。
15Wではファン周りの処理をスッキリさせたりやESRのロゴを無くしたりして更に質感を上げたな、という感じ。
光り方が綺麗
15W版は7.5Wと通電中にファン周辺が光る仕様は15Wでも続投。7.5Wと比較してみると光り方が間接照明のようになっている。
ファン周りのラインが無くなっているのもあってかなりおしゃれ。
サイズ感はほぼ同じ
充電器本体と固定用クリップのサイズ感は基本的にほぼ同じ。
厚みもほぼ一緒。充電出力が上がったぶんファンが大きくなっているかと思っていたから意外だった。
唯一の違いは向き固定用の縦線マグネットが追加されたこと。7.5Wと比べると縦線のぶん充電器が少し縦長。
取り付けの向きは自由
吸着の角度は7.5W版と同じく自由自在。縦線が追加されたことで縦向きの固定が若干しやすくなったかもしれない。
MFM認証取得で15W充電に対応
15W版の最大の特徴。
AppleのMFM(Made for Magsafe)認証を取得していて、商品名の通りMagSafeの最高出力になる15W充電に対応した。
単純に従来品から出力が2倍になったけど、充電速度はスマホ本体の発熱状態で制限がかかるから充電スピードは必ず2倍になるわけじゃないので注意。あくまで充電に最適な環境で発揮できる最高性能という話。
MFM認証とMagSafe互換の違い
MagSafeの充電周りは誤解しやすいのでここでいったん整理しておく。
MFM(Made for Magsafe)認証
MagSafe対応品としてAppleの認証が通った製品を指す。要は以前から存在したMFi認証のMagSafe版。
基本的には認証が通った製品のみ本来の性能を発揮できるようになっていて、MFM認証の場合はMagSafe充電規格の15W出力でiPhoneを充電できるようになる。
MFi認証品と同様、認証を通すコストがかかるぶん製品価格は高くなる傾向にある。
今までMFM認証に対応したワイヤレス車載充電器を販売していたのはBelkinくらいで、そこに今回ESRが参入してきた。スペック的に今回の15W版は割と貴重な存在。
MagSafe互換
MagSafeのマグネット吸着機能が使えるけどMFM認証を取得していないもの。
MFM認証を取得していない充電器の場合、iPhoneの充電はMagSafe充電ではなくQiワイヤレス充電が使われるから、充電出力は最大7.5Wに制限される。ESRの7.5W版もこれに該当。
「最大15W」の表記に注意
ネット通販で売られているワイヤレス充電器の多くは「最大15W」とされていることが多いけど、MFM認証を取得していないとiPhoneの充電出力は最大7.5W。Androidの15Wワイヤレス充電に対応しているスマホを使ったときに限って15W充電ができるという仕組み。
「MagSafe対応、最大15W」と表記されている充電器もMFM認証を取得していなければ上と同じく最大7.5W充電。粗悪品でなければここの仕様は確認できるので、購入時に間違えないよう要注意。
15W版の使用感は7.5W版より快適
話を本題に戻して15W版の使用感を解説する。
冷却ファンの音が小さくなった
まず使ってみてすぐ気付いた点。冷却ファンの音が7.5W版と比べてかなり静かになった。
7.5Wもうるさくはなかったけど、停車中とか車内が静かなときは少し気になるくらいの音だった。15W版は停車中でもほぼ分からないくらいまで静音化されていて非常にストレスフリー。
高級車やEVとか車内の静粛性が高い車に乗っている人ほどこの恩恵は受けられると思う。
冷却性能はほぼ同じ
15W版は充電出力は従来の2倍の15W、本体サイズは7.5W版とほぼ同じだから充電時の発熱を処理できるのか少し不安だったけど、そこも問題なかった。
15W版を購入した後に7.5W版でやった検証と同じように一日使い続けてみたけど、熱による機能制限もかからず無事にスマホを使い続けることができた。
冷却性能は7.5W版と同じく十分で、夏場も安心して車内で使える。
暑い時期の充電速度の違いは限定的
15W版の特徴である15W充電の恩恵は正直そこまで体感できなかった。7.5W版と比べると充電速度は多少上がっているものの、充電出力2倍だから充電速度も2倍というわけではなかった。
上にも書いた通りあくまで最大出力が15Wになったという話で、常時15Wではないはずだから発熱などに応じて充電速度に制限がかかっているんだと思う。
充電速度はもっと気温が低くなると違いが分かると思うから、気づいたことがあればまた追記したい。
価格が唯一かつ最大のネック
15W版は7.5W版の完全な上位互換といえるスペックでデザインも良い。車載充電器としてはほとんど完全体の域にあると思う。けど手放しでおすすめはできない。その理由は圧倒的な価格差。
価格比較とコスパ
2023年9月12日時点のAmazon価格を基準に、前モデルの7.5W版から順に見ていく。
まず7.5W版は4,999円。
他社の7.5Wワイヤレス車載充電器と比較すると少し値段が高いけど、MagSafeと冷却ファンの付加価値を考慮すると妥当な金額だと思う。
- 参考① BelkinのMagSafe対応7.5Wワイヤレス充電器:4,227円
- 参考② SEIWAのQi充電器:2,975円
対して15W版は13,399円と、7.5Wとの差額は8,400円。
15W対応のワイヤレス車載充電器はBelkinも出していて、Belkin版は12,111円。ESR版は約1,300円の差額に冷却ファンが付いてくる形になるから、15W版も競合や付加価値を考慮した価格設定になっているんだと思う。
- 参考③:BelkinのMagSafe対応15Wワイヤレス充電器:12,111円
とはいえ7.5W版と比較して2倍以上の価格となってくると流石に手を出しづらい。結局のところ15W充電と静音化した冷却ファンのために8,400円の追加投資が見合うかになってくるけど、そこに価値を見いだせる人はかなり限られてくると思う。
コスパは7.5W版が上
結論は最初にも書いた通り、7.5W版のほうが普段使いで十分な性能と価格のバランスが取れている。
15W版は正直趣味の領域。価格がもう少し下がればもっと評価は上がった。出来はいいだけにそこだけとても惜しい。
15W版の取り付けの工夫
ここからはおまけ。7.5W版から乗り換える形でスイフトスポーツ(ZC33S)に取り付けるときの試行錯誤の記録を参考として書き残しておく。
サイズが課題
取り付け位置は前回と同じく運転席側のデフロスター周辺。スペースの都合上取り付けはかなりギリギリだった。
15W版は向き固定用の縦線が追加されたぶん数センチ縦長になったけど、縦長になったせいでケーブル配線のクリアランスがなくなってしまい、7.5W版と同じような取り付けができなくなってしまった。
なんとか取り付けられないか、そして配線も綺麗にできないか色々試行錯誤してみた。
失敗:UGREENのL字型USB-Cケーブル
最初に考えたのはL字型ケーブル。充電器からのケーブルの出っ張りが最小限になって何とかなるんじゃないかと思いUGREENのL字型USB-Cケーブルを準備。
結果、設置スペースと配線処理はクリアできたけどそもそも給電してくれないというまさかの事態に。スマホの充電には普通に使えたから、恐らく給電出力の調整がうまく機能していないんだと思う。このL字型ケーブルは自宅の充電ケーブルに配置転換させた。
妥協:充電器を横向きにしてL字型USBアダプタを使う
最終的にはこの状態に落ち着いた。
L字型ケーブルが使えないのでL字型USBアダプタで代用、ただしサイズが大きいから充電器を横向きにして設置。下向きにケーブルが挿せるようにアダプタを取り付け、ケーブルはAnkerの普通のPD対応USB-Cケーブルを使用した。
折角本体が綺麗なのにその周りがツギハギな印象になってしまって少し残念。実用性を考えるとこうせざるを得なかった。